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大学教育改革フォーラム2015参加録②「オーラルセッションⅠ及びⅡ」


Twitterでもたまに呟いていますが、若手中堅職員は一緒に学んでいこうという観点から地域や同じ仕事同士の勉強会の運営に関わっております。

そこで大学教育改革フォーラムの最初のオーラルセッション1では、「勉強会の企画運営を通じた大学職員力の育成」に参加しました。

前回と同じく発表全文を載せているわけではなく、重要だと思った箇所について自分なりにまとめておりますのでご承知おき下さい。

 ◯学びと気づきが生まれる若手職員主体の研究会運営
    山崎 博昭氏(関西大学
・(結論として)大学行政管理学会の大学改革研究会を通して、人的ネットワーク、視点の変化(視野の拡大)、モチベーションの向上が現在に見られる。→職員の内面の変容がある。また将来は、内面と外面の変容に繋がると考えている。
・大学行政管理学会の大学改革研究会は、若手職員が大学職員間の相互支援をテーマとしている。
・研究会の活動は、ワークショップ型の研究会、講演会、交流会の3つとなっている。
・研究会の運営は毎月ミーティングを行い、企画担当者制を採用し、連絡手段の活用を行っている。(例 サイボウズLive
・研究会で気付いた学びと気づきは、発表者自身の興味の変遷があった。(高等教育政策→研修プログラム→人材育成)
・研究会運営者にアンケートを実施。(回答数12名/対象者12名)
   研究会に求めていること→人的ネットワークの構築、同世代の大学職員の情報共有の場が欲しかった。
   企画立案・運営等を通して得られたこと→視野の広がり、モチベーションの向上
   仕事に活かせること→ネットワークを構築し、情報共有や情報交換。対個人と対職場での能力の向上、内省のきっかけになった。

   
◯大学職員力の形成      野澤 貴代氏(名古屋大学
2つの学びの場の企画運営を通じての発表
・国立大学一般職員会議(コクダイパン会議)は、国立大学んお将来像や諸課題に関する国立大学のキーパーソンとなるための自発的な自己研鑽。
・国立大学きょうかい若手職員勉強会は、各国立大学から研修として代表が参加する、国立大学を取り巻く環境の学びなどいくつか目標がある。
・コクダイパンは一般職員・自発的な参加、国大協勉強会は中堅職員・研修として参加
・2つの勉強会は人的ネットワークの拡大は共通、しかし参加者の主体性は勉強会で異なる。
・発表者が勉強会の運営に関わった理由は、以前参加したコクダイパンから企画参加のきっかけである。また大学は様々なステークホルダーがいると考える出来事があり、将来どんな職員になりたいか、どういう学びをすればいいかを考えた事がきっかけ。
・学んだ事は3つ、①企画するとは何か?、②人的ネットワークの大切さ、③自分自身の大学職員の強みと特徴の発見
・大学職員力の基礎となる土台作りに企画体験は必要。


◯勉強会のリーダー経験による学びと成長     内田 智也氏(岐阜大学
・コクダイパンの事例 第4回の実行委員は第3回からの紹介、第5回の実行委員長は前回実行委員経験者と他の理由から。→主体的に実行委員長になったわけではない。
・コクダイパン実行委員は全国に点在という条件、各メンバーに役割を決めていたが各メンバーが自律的に動いていたので、リーダーとしてよりかは委員としての行動も多かった。
・JUAM新人・若手向け研修会での事例 企画メンバー募集のメールで企画メンバーになった。国公私立大学行政の違いも経験したいというのもあった。
・準備期間が短くメンバーが多いとワークテンションが落ちてくる。→リーダーとしてのミッションは、全員を企画運営に携わらせること、リスクマネジメントを行い適切に研究会を開催すること
・企画運営経験によって得られた能力、成功体験は企画運営者は参加者より得られた。成功体験からモチベーションの向上。
・ポスト勉強会症候群→ギャップにより喪失感等を感じる(←得られた知識を活かせる場が設定されていないから)→自分の働き方は自分で変えることはできる。
・良い仕事の在り方は、意欲と役割と能力があること。

発表を聞いていて思うのは、発表者は何故勉強会に参加しようかと思ったのか、また運営に関わろうと思ったのかを自身の経験やアンケートから発表があったのですが、職員が勤務している大学の規模・設置形態・環境でだいぶ変わるのではないかと思っています。


続いてオーラルセッション2です。こちらは「大学業務の高度化と大学院での学習」に参加しました。大学の高度業務化について、大学院を修了した方達がどのように業務に取り組んでいるかや大学院で何を学んだかの発表です。

◯質保証時代に対応する職員業務の在り方(中村 章二氏 愛知教育大学
・大学改革は質保証の時代へ。質保証を支えるツールやアカデミックアドバイシング。
・単位取得証明書と成績証明書
   質保証と国際化の時代の証明書とは?→GPAが確認できるか?
   単位取得証明書は、単位取得をした科目一覧。成績証明書は落とした科目も載っている。
   調査結果から、国際的に通用する証明書は4%?
   →中学や高校では学校単位の評価分布を記載している。(当該生徒の状況がわかる)
・制度を正しく理解(なぜ、誤用がされているのか)
   アメリカのシステムとの違い、日本の研究者が米国大学を調査する場合は調査対象は教員に限られているのでは?→システム運用の職員は調査されていない?
   セメスターも単純に学期を割っただけでは?(本来は各学期で入学・卒業があるべき)
   CAP制は、能力に合わせた指導である。能力がない人は履修科目を少なくする。
・大学の改革実績として取り上げられているGPAが証明書に何故記載されないのか?
   →内容に疑問の証明書は信頼性低下により学生の不利益へ。
・大学院で学んだ経験では、原典を当たる、論理的根拠を明確にする。資料収集の技術、教員の理解などを学び理解できている。
・学期制は、学期毎に完結しているのか?米国のクォーター制は3学期+夏学期
・GPAの卒業判定への活用は、同一科目の再履修は×であったりするので、GPAをあげる事ができる仕組みが必要。


◯大学職員が大学院で学ぶ意味( 岡 和寛氏 京都産業大学
・近年大学を取り巻く環境の変化は目まぐるしい→職員の役割は重要になってきている。
・最近の中教審の議論では、高度専門職の設置やSD(staff development)の義務化があげられる。
・大学職員の能力向上の一つとして、大学院進学をあげる。
・発表者も自身の所属する大学院(マネジメント研究科)に進学。
・この研究科に職員派遣研修制度があり、毎年1名募集がある。(目的は大学経営管理能力を養うため)→応募で落ちても、翌年以降もチャレンジできる。
・この制度は、入学検定料や入学金、授業料等は免除。また試験は受けなければならない。また待遇として土曜日の勤務免除。※入学試験に合格しないといけない。
・この制度を使った職員にアンケートを行った。(簡単な傾向として以下)
   進学理由として、自身の成長の場としてが多い。
   修士論文作成経験は、仕事と大学院の両立は苦労が多い。(学内なので指導教員の指導をうける機会は多い)
   進学の意義は、様々だが専門分野の知識の深化は肯定的な傾向。
 ・アンケート調査から見えること
   大学で働く身として、大学院という現場を知っておきかった。
  ・身につけた知識・能力の共通点
   ①専門分野の知識、②物事を論理的に考える力、③自分の考えを他者に文章で伝える力
・大学院で学ぶ意義は、大学院という現場を知ることができる、他の大学院生や教員と接することにより大学の課題・問題を発見できる。

・大学院で学んだことの還元は、学んだ研究の部署に配属される場合が多い。
・大学は大学院でこれを学んでこいというのはない(今の業務に直結するものを学んでこいはなく、大学人として関係あるものであればいいという方針)
・応募は、年によってマチマチで、昨年度は2名であった。

◯教育改善における職員の役割(竹中 喜一氏 関西大学
関西大学の授業支援ステーションの取組→授業支援SAが常駐。
・SAはステーションの一次窓口で、レポート整理や提出者入力などを行う。
   →特定の授業にひもづくものではない。
・SAの採用や研修は職員が担当。また業務上の指導や監督も行う。
・ラーニングアシスタント(LA)の制度は、(面白いが)わかりやすいだけではない授業を受けられるようにするため、設置した。(面白い、もっとわかりたい授業にする支援)
・LAの役割は、授業内における学習者の支援。LAは学部生で1クラス2名以上が基本。
・採用は、教員の役割で前学期にLAができそうな受講生をスカウトする。
・LAはアクティブラーニング促進には一定の効果が見られる。
・①職員だけで教育改善は可能か?②教員との役割分担はどう決まる?③教育改善に関わる職員の能力開発は?
   ①は難しい、教員が期待する支援と職員の支援とのギャップ

・教員と職員の強みは違う。
・形だけの教職協働はNG。
・教育改善にかかわる職員の能力開発として、まずは職員本来はの業務を全うする(事務的業務を行う)。そして教育の主体的目線を少しでも知ることが必要。

京都産業大学のプログラムは非常に魅力的ですね。職員が大学院に行く際に学費の補助はよく聞きますが業務も特定の曜日は免除というのは、良いなと思います。(東大の大学院の高等教育を学ぶコースも、土曜にやるとはいっても、山手線内であれば問題ないですが、首都圏でも場所によっては土曜日の授業は行けないでしょうし)の

個人で気になるのは、このフォーラムには自己啓発の職員が多いのでしょうか?それとも出張扱いが多いのでしょうか?知り合いは自己啓発が多かったですが…。

なお、このフォーラムは学会とは違い、このような場に出た事のない職員でもハードルは非常に低いと思います。来年度も開催があれば、学べることは多いのではないでしょうか。