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大学教育再生加速プログラムの採択された私立大学から傾向を見てみる

先日、大学教育再生加速プログラムの採択状況が発表されました。

平成26年度「大学教育再生加速プログラム」の選定状況について:文部科学省

 

選定状況については、大学関連の著名なブログで分析されておりますので今回は私立大学に焦点を充てて、いくつかの情報を合わせてみました。 

なお、大学教育再生加速プログラムの私立大学の採択校は下記の表の通りです。

テーマⅠ テーマⅡ テーマⅠ・Ⅱ テーマⅢ
(入試改革)
テーマⅢ
(高大接続)
合計
5 4 13 1 1 24

(本プログラムは、46件が採択されていますので、約半分が私立大学となります。)

 

母数は24件とあまり多くはないのですが、ふと気になった事として下記の3点について調べてみました。なお、学生数等の数値は、「大学の実力2014」を参考にしています。

①採択された大学の規模はどうなのだろう?

 以前、本ブログの記事で申請状況を下記のように述べました。

大学教育再生加速プログラム申請状況を大学規模別に見る - 大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

 小規模大学はテーマⅠのアクティブラーニング、中規模・大規模大学はテーマⅡ学修成果の可視化に多く申請をしています。

  では、採択された大学は実際どうだったのでしょうか?

採択された私立大学のテーマ別に、学生数の平均値を出してみました。

 

()内は採択大学数 テーマⅠ
(4)
テーマⅡ
(4)
テーマⅠ・Ⅱ
(13)
テーマⅢ
(入試改革)
(1)
テーマⅢ
(高大接続)
(1)
平均人数 4063.4 1593.2 7382.3 6283 4459

 

母数が小さいために、平均値としていかがなものかという疑問はありますが、数値だけであればテーマⅡは小規模、それ以外は中規模の大学が多い結果による数値になっています。

これについては申請状況からして、予想できる結果ですね。

②採択された大学の収容定員の超過率は?

数字を出すことに意味があるかは、少し疑問ですが・・・。

学生数とは別に収容定員における学生の超過率の平均を出してみました。

(学生数がバラバラの大学の超過率ですので、乱暴なまとめ方であることは付け加えておきます)

()内は採択大学数 テーマⅠ
(4)
テーマⅡ
(4)
テーマⅠ・Ⅱ
(13)
テーマⅢ
(入試改革)
(1)
テーマⅢ
(高大接続)
(1)
定員超過率
平均
0.94 0.83 1.10 1.17 1.03

テーマⅠ及びテーマⅡについては、収容定員より学生が少ない大学が多く見られます。テーマⅠ・Ⅱについては、3大学が超過率1.00以下でしたが、全体としては良い傾向が見られます。

 

そもそも人を集めやすい中規模・大規模大学がテーマⅠ・Ⅱの申請・採択が多いことも要因かと思いますが、現状の基礎体力で小さい大学はテーマⅠ・Ⅱに取組むのは難しいという判断があるのではないかと思います。

 

③昨年の私立大学等改革総合支援事業との関係は?

大学教育再生加速プログラムは、いずれのテーマでも、申請する上で大学全体が改革を行うという約束をしなければなりません。大規模大学の申請が少なかったのは、大学全体で改革を行うという事の影響もあったと考えます。

また私立大学等改革総合支援事業は、選定されたタイプにもよりますが、教育改革や取組を行っている大学が選定され、補助金が交付されています。

参考 平成25年度の私立大学等改革総合支援事業のタイプ

 ◆タイプ1「建学の精神を生かした大学教育の質向上」(大学教育質転換型)
 ◆タイプ2「特色を発揮し、地域の発展を重層的に支える大学づくり」(地域特色型)
 ◆タイプ3「産業界など多様な主体、国内外の大学等と連携した教育研究」(多様な連携型)

 

この中で、タイプ1に選定されていることは、大学教育再生加速プログラムの申請要件とも大きく重なる所があります。

 

そこで、今回選定された大学は昨年度の私立大学等改革総合支援事業に採択されているかを調べてみました。

  テーマⅠ
(4)
テーマⅡ
(4)
テーマⅠ・Ⅱ
(13)
テーマⅢ
(入試改革)
(1)
テーマⅢ
(高大接続)
(1)
タイプ1 2   9    
タイプ2 2 2 5   1
タイプ3 1   10   1

横が今回のテーマで縦が昨年度の総合支援事業のタイプ別に選定された結果です。

なお、総合支援事業複数タイプに選定されている場合がありますので、重複の値です。

 

よく見ると、テーマⅠ・Ⅱに採択された大学は、私立大学等改革総合支援事業に採択されている件数が多いことが見受けられます。(いずれのテーマにも昨年採択されていない大学は13大学中2大学でした)

 

この事から、今までに教育改革等に取組んできて基礎となる土台を作った大学はテーマⅠ・Ⅱに、これからという大学は無理をしない事業にしよう(?)という事で、テーマⅠもしくはⅡに申請したとも考えられるのではないでしょうか。

 

最後に確認として、大学教育再生加速プログラムの申請要件は、大学全体で取組むもので非常に厳しい要件です。

(実際、要件の一つのFDの参加率が四分の三となっていても、話を聞いてみると100%として申請をしなければならなかったりしたそうです)

逆を言えば、次年度も申請を考えている大学は今年の申請要件を踏まえて取組を行っていく必要があります。

補助金をもらうために大学を変えるのかと言う議論もあることは承知していますが、職員として考えなければならないのは、大学のビジョンにおける取組や組織の存続も考えなければならないと思います。