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私立大学等改革総合支援事業 タイプ1の項目からみる改革について

以前、このブログで私立大学等改革総合支援事業について、概要を簡単に書かせていただきました。国側としては、補助金を出すことにより、大学改革の促進が狙いだと思います。

私立大学等改革総合支援事業による大学改革の推進について - 大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

 

では、私立大学等改革総合支援事業において、どのような大学としての改革を推進しているのでしょうか。

 

今回、はテーマ1の「建学の精神を生かした大学教育の質向上」の項目から見てみたいと思います。

 

さて、配点が高いものは、それだけ重要視されているという事ですので、まず10点の配点をされているものから見ていきたいと思います。(一部設問は省略しています)

・学長を中心とした全学的な教学マネジメントの構築

 質的転換答申で言われていることですね。今回は「教育課程の編成に関する全学的な方針の作成を目的として設置された組織」であり、開催実績等いくつか条件を満たしていることが必要です。

 キャンパス・学部・学科で勝手にカリキュラムをいじらずに、大学としてカリキュラムの全学的な方針を決めるから、それに沿ってねということですかね。昔は、学科にいる先生方は、この科目ならもてます!というものを集めてカリキュラムを作ったこともあったみたいですが、答申で言えば、体系的なカリキュラムを組みなさいということもあるかと思います。

 あとよく言われますが、教学マネジメントとガバナンスは異なります。

シラバス作成要領により、準備学習に必要な時間またはそれに準じる程度の具体的な学習内容をシラバスに記載しているか

 こちらも質的転換答申にある、単位の実質化に伴う設問であると考えられます。シラバスは、各大学の教育情報の公開で見ることができますが、事前事後学習時間やその時間を担保できる事前事後学習内容を載せている大学は少ないと思います。そもそも、授業内容は1行だけで、未だに事前事後内容の欄さえない大学も多いです。金沢工業大学シラバスは有名ですが、これらをきちんと書いてありますね。

・学生による授業評価の結果の活用

 10点を取るには、全学部でやっていて、授業の改善を図るための制度的取組を行っていることが必要です。単に授業アンケートをやっているだけや、学生の公開しているだけでは、活用度合いが低いとみなされます。そういえば、学生は授業アンケートの結果をきちんと見ているのでしょうか?勤務先の大学や私が学生の頃は、そんなものを見たようなことはないと思います。

 

続いて、5点配点の項目です。

・大学内にIRを専門で担当する部署の設置と、専任の教員か職員の設置

 IRは、私は「大学の意志決定支援」が目的と解釈していますが、ここでいうIRは、「入試や経営に関するものではなく、学修時間や教育成果等に関する情報収集・分析」とされ教学IR等に入るものです。

 また専任についても教員か職員を問われていませんが、専任であることが必要です。(小中規模の大学は、人的資源をそこにさけないということもあるので、委員会方式のIR組織設置により、3点は加点されます)

 懸念点は、各大学にIR部署が出来て、きちんとIR部署としての機能を生かせるかです。個人としてはIRを行うには、統計学高等教育政策・学内の状況や歴史などに通じている必要があると思います。外から人を持ってくればいいという議論も本学ではあるのですが、きちんとその人をサポートする体制を整えないと、組織が形骸化してしまいます。(知識や経験に加え、各部署と連携するには信頼関係も必要なので、関係性の醸成も時間がかかります)またIR部署ができれば、何でもできる。やってくれると考えている人もいると思いますので、「IR部署をつくればいい」ではなく、「IR部署をつくって、その大学でどのような事をやっていくかのIRのデザインも同時に行う」事が重要かと思います。

・教育課程の形成・編成への職員が参加する仕組み

 教育課程編成する委員会等の構成員に職員がいるかと言われている内容です。単に事務局ではなく、構成員として委員になっているかが重要です。(とはいっても、委員になっても傍聴しかしていない職員もいそうです。SDや個々でいかにスキルアップをするかが課題かと思います。)

シラバスの記載内容の適正について、第3者がチェックしているか

 今年度のシラバスについて、編集上ではなく、カリキュラム方針に基づいて、授業内容の適正かが問われています。この第3者は、職務内容が確認できることやチェックした事実を確認できるようにすることが必要です。

 例えば、史学科の授業で、「史学入門」という授業があり、それを担当するA先生の専門が江戸時代の船の歴史が専門とします。この授業でシラバスに15回全て「船の歴史」では学科の入門科目としては、カリキュラム方針に合わないということになります。

・アクティブラーニングの授業を行っているか

 この補助金のアクティブラーニングの条件は、「学外の特定の組織等と連携し、当該組織等の課題解決に学生に主体的に関与されることを目的とした授業」とあり、実はPBLではないかと思います。どちらかというと狭義のアクティブラーニングですね。ただ、看護や教職などの資格取得を目指している学部は、導入にハードルが高そうです。(全学的に行っていることが5点をとる条件となります)

・学生の学修成果の把握

 全学的かつ複数の学年に対して、学修成果の把握が必要です。例えば、例として外部の標準化されたテスト・学修行動調査・ルーブリックの活用・学修ポートフォリオの活用のいずれかが必要です。思いつくものとして、リアセックのPROGやIRコンソーシアムの調査等も活用できるのではないでしょうか。

 

あとは4点や3点の配点となりますが、全ては書ききれないので一部のみ項目だけです。

・FDや質的転換答申に関するSDの実施

・履修体系図やナンバリング

・オフィスアワー

・GPA制度の活用

 

さて、ここで注意しなければならないのは、一般に私達が思っている定義と補助金上での定義や条件が少し異なる場合があります。特にアクティブラーニングはその顕著な例ですね。

 

またタイプ1で言えば、質的転換答申に書かれていることそのままのものが多いです。文科省の行っていることに迎合するのかという意見もあるのですが、タイプ1は全国にある私立大学の約半分が採択され、また補助金は経常費だけでも中規模大学であれば数千万は違うかと思います。(申請は強制ではないので、申請しないという方法もあります)

 

最後に、本補助金のQ&Aに追加された質問に「通信教育部は1つの学部等・研究科とみなす」と追記されました(ただし、通信がアクティブラーニングによる授業の実施は除く)通信教育部を持っている大学が今年度、どのように申請するかは非常に興味深い所です。